遺留分が問題となる具体例
1 遺言書が遺留分を侵害している場合
遺留分が問題となる最も典型的な場面は、遺言書があり、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合に、侵害された遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行使するという場面です。
遺留分割合は、子や配偶者の場合には法定相続分の2分の1、親の場合には法定相続分の3分の1ですので、遺言書の内容がこれらの遺留分割合を侵害している場合に、問題となります。
具体的には、遺産が1億円あり、相続人が子供Aと子供Bであるケースにおいて、遺言書で子供Aに対し、9000万円を相続させ、子供Bに対し1000万円を相続させる場合には、子供Bの遺留分(4分の1=2500万円)を1500万円侵害していますので、子供Bは子供Aに対し、1500万円を請求できることになります。
2 相続開始10年以内に、大きな生前贈与がある場合等
遺留分が問題となるケースとして、生前贈与を対象とした遺留分侵害額請求があります。
相続人に対する贈与は生前10年前までさかのぼって遺留分侵害額請求の対象となります。
例えば、遺産は0円であったが、亡くなる5年前に、被相続人が子供Aに対し1億円を贈与していた場合には、BはAに対し、遺留分割合4分の1の2500万円を請求できます。
相続人以外への贈与につきましては、相続開始前1年以内にした贈与に限られますので、実務上問題となるケースは少ないです。
3 民事信託(家族信託)が遺留分を侵害しているケース
近年増えてきたのが、家族信託の内容が遺留分を侵害しているケースです。
例えば、委託者Aが受託者Bに対し、Aが生前はAを受益者とし、Aが死亡した後は、子であるCを受益者として財産を信託する家族信託を作成していた場合に、Aの他の子であるDは、信託受益権を対象に、遺留分侵害額請求ができます。
特に信託受益権の場合には、遺留分侵害額請求を受託者に対して行うべきか、受益者に対して行うべきかを始め、多くの注意点があります。
遺留分が侵害されているかもしれないと思ったら、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめします。